21世紀末、最高の文明を誇る世界。 その文明社会の陰の礎となり、人知れず世界の闇に存在する異形、《魔》と呼ばれる存在と戦い続けてきた来た者達がいた。 卓越した戦闘技能を以って《魔》と戦い退ける者、《退魔師》と呼ばれる彼等を纏め上げる一族に生まれ、その長たる総帥となる宿命を背負った少年、華神京也。 しかし、京也は、その宿命に縛られる事を厭い、未だ自らの責務を果す覚悟を持てずにいた。 そんな、京也に対し、彼の武道の師である榊和泉を始めとする一族一党の者達の多くは理解を示し、その支えとなる事を望んでいた。 自らの宿命を受け入れられず、そして、その責務の重さに心惑う京也の心には、嘗て、突然の別離をもって失った存在への愛憎が大きな陰として今も残っていた。 自らの存在に課せられた宿命に惑う京也を嘲笑うが如く、彼の前に一族と因縁の深き宿敵、世界に混乱を齎す存在たる秘密結社の刺客が現れる。 その存在が操る《流血の邪神》の力に苦しむ京也の想いが、永き封印にその身を縛られし特異の存在《戦女神・マナ・フィースマーテ》を解き放つ。 その邂逅こそが、京也と《マナ》の運命の物語の始まりであった。

2008年6月1日日曜日

『M・O・D+しぃー ~プリンセス・リリー~』 後編

「シルク、避けてっ!」
 叫ぶと同時に、タイミングを見計らって《魔導》の力を発動させるメリィア様。
 狙いに違わず、生み出された魔力の刃が魔狼皇を薙ぎ払い、その体勢を切り崩す。
 そして、私とアンナさん、それに回避からの着地と同時に踏み込んだシルクさんの攻撃が一斉に、敵の巨体へと叩き込まれる。
「貰った! 《深闇を切り裂く光の閃刃》!」
 チェリナ様の意志によって最大威力まで高められた光の魔力は、交差する刃の形を以って、魔狼皇の身体を穿つ。
 それで戦いの大局は一気に決した。
「皆、止めの一撃を!」
 私は、叫び、自らも武器を手に勝負を決する行動に出る。
 断末魔の咆哮を上げ崩れ落ちる凶獣の体に、地面が大きく震えた。
「勝った、・・・の?」
 半ば呆然としながら、私は、勝利を確信する為にその巨体へと近付く。
 歩み寄り間近へと至るにつれ、巨獣の体躯の巨大さを改めて思い知らされる。
 そして、ゆっくりと灰塵の如く消えていく魔狼皇の亡骸に、私たちは、勝利を現実にする。
 後に残されたのは、深紅の色を持つ鉱石の塊のみであった。
「やったわね!」
 歓び勇む仲間たちの声を背に受けながら、私は、視線をもう一つの戦いに向けた。

 残されたもう一匹の凶獣と戦う彼の姿は、何故か先刻に較べて、大きく精彩を欠いていた。
 苦戦ではないにしても、一進一退の攻防を繰り広げる彼の戦い振りに、私は、違和感を強くする。
 私を助けてくれた時の姿を思えば、明らかな違いがそこには存在していた。
 そう感じているのは、他の皆も同じであるらしく、如何するべきかと考えているようであった。

『俺が苦戦しているように見えても構わずにいてくれて結構だから』
 彼は、戦いの前にそう私たちへと釘を刺した。
 ならば、ここは今しばらく様子を見るべきだと判断し、私は、彼の戦いを見守る事にした。

「うーん、観客に心配されているみたいだし、遊びはこれぐらいにして、そろそろ本気を出すとするか」
 彼が嘯くその言葉を聞いたのは、恐らく一番近くにいた私だけだろう。
 そして、彼が口にした言葉と共に一瞬だけ見せたモノは、私の心を烈しくざわめかせた。

「《魂穿つ無限の神刃》!」
 その《力奮う真名》に応えて、彼の手に握られた長剣の刃に淡い光が宿る。
「行くぞ!」
 言い放ち、一歩後ろに跳んだ彼は、着地と同時に、言葉どおり目にも止まらぬ身のこなしで突進し、次の瞬間には魔狼皇の背後に立っていた。
 頭を一刀両断にされ、断末魔すら上げずに地面へと倒れ伏した凶獣の巨体が、再び大地を揺らす。
その鮮烈な勝利は、余りにも鮮やか過ぎて、逆に呆気ないモノのように私の心へと映った。

「おめでとう」
 彼の口から告げられたその言葉が、呆けていた私の心を正気に戻す。
「・・・あ、ありがとうございます」
 私は、まだ気が動転しているのか、気の抜けた返事を返すのがやっとだった。
「おぉー、運が良いな。両方とも『アタリ』だ」
 彼は、自ら倒した敵の分と私達が倒した敵の分の戦利品を拾い上げ、そそくさとその両方を私に手渡した。
「良いんですか、これ、貰ってしまって?」
 私が洩らしたその言葉に、彼は、訝るように眉を曲げる。
「それが必要だから、こんな所まで来たんじゃないのか?」
 そう尋ね返されて、私は勿論、他の皆も困惑する。
 正確に言うならば、私たちは、唯、噂に聞く《死眼の凶獣》を見物に来ただけである。
 だから、まさか本当に倒せるとは思っていなかった。
「その、実を言うと、私たち、《死眼の凶獣》を見に来ただけなんですけど・・・」
「えーと、それって唯の物見遊山に来てたという事?」
 彼は、私が口にした言葉を聞いて、微妙な表情を浮かべる。
「はい。『狩り』は狩りでも、『散策』するという意味の『狩り』でここまでやってきました」
「・・・」
 一瞬の沈黙、そして、彼は、大きな笑いを洩らした。
「済まない。俺がとんでもない勘違いをしてしまったみたいだな」
「いえ、私たちにしてみれば、助けて貰った上に、こんな貴重な体験が出来て感謝しなければです」
 私がそう言うと、他の仲間たちも皆一様に頷く。
「否、本当に済まない勘違いをした。キミ達を無駄に危険な目に遭わせたのだから、これは詫びようもないな」
 それまでとは全く違う真剣な眼差しに、彼が本気で反省している事が窺がわれた。
「では、その『オマケ』は、今回のせめてものお詫びとして受け取っておいてくれ」
「でも、これってかなり高価なモノなんじゃ・・・?」
 嬉しい申し出ではあるが、恩を受けて更にそれ以上の物を受け取る訳には行かなかった。
「多分、そうだと思う。でも、俺には必要無い物だし、それに、その石には二重三重のトラウマがあるから、正直、見るのも触るのも遠慮したい。要らなければ、その辺に捨てておけば良い」
 それが冗談ではなく、本気で在る事は、彼の目が正直に語っていた。
「では、ありがたく貰っておきます」
「ああ、そうしてくれ。まあ、キミ達なら、《獣神皇の護冠》も充分に似合うだろうしな」
 彼は、何かを思い出すようにして、苦笑混じりに笑う。
「しかし、凶獣がらみでこのオチは、セティの時のそれと同じじゃないか。こりゃ、キミは第二の《英雄皇》になる宿命に在るのかもしれないな。・・・否、寧ろ、エンの奴を彷彿させられるか・・・」
 更なる苦笑を浮かべながら独り言の様に呟く彼の視線が、私の視線と重なると同時に穏やかな笑みへと変わる。
「・・・『セティ』! 『エン』って、あの《至高の英皇》と呼ばれるエン様ですか!?」
 憧れ以上の想いを抱くその存在の名を聞き、私は、興奮の余り叫んでいた。
「ほぉー、『様』付けとは、奴の本性を知らないとみえる。どんな良い噂ばかり聞いているかは知らないが、余り期待し過ぎると本当のアイツを知った時の衝撃が大きくなるぞ」
 そう語る彼の言葉に悪意は無く、それどころか好意にも似た親しみが存在する事は分かっていた。
 それでも、私は、彼が口にした『本性』という言葉に感情を逆撫でされてしまった。
「貴方に、彼の何が分かるというのですか!」
 そう、私が『彼』に、《至高の英皇》に憧れるのは、彼の『本性』に対する部分が大きかった。
 嘗て他者は、自らの嗜好を貫いた彼を天性のダメ人間と嘲笑った。
 しかし、彼は、その嘲りに屈しない想いを培い、終には、世界に名高き冒険者の一人となった。
 彼が貫いた嗜好自体に重みがある訳ではない。
 その嗜好を貫いた理由と、それを貫く意味にこそ重きがある。
『ネコ耳メイド服は、漢のロマンだ!』
 その彼の言葉は、他者が聞けば嘲りを受ける謂れとなる。
 しかし、彼を信じ支えた唯一の存在は、それを彼にとっての『正義』だと認め、自分にとっての『誇り』だと受け入れた。
 だからこそ、彼は、その『正義』と『誇り』を護る為に、自らの想いを貫き、それを意志に変えて《皇》と呼ばれるまでに至った。
 嘗ての邂逅、その時、彼は私にこう言った。
「好きなモノが在るならば、唯、素直にそれを好きだと主張し、愛し続ければ良い。確かに、この世界は、酷く残酷な場所だ。だが決して非情な意志が支配する場所ではない。君が大切なモノに対するその想いを護りたいと望むならば、必ずそれを助けてくれる存在はいる筈だ。俺にアユラがいて、アユラにアユラを想って味方となり、その想いを護ろうとした存在がいた様にね」
 彼は、《導き手》であるその存在を愛し、その存在に愛され《皇》へと至った。
 その彼が私に授けてくれたモノ、それが、この世界に於ける私の『夢』となる福音だった。
 だから、『彼』の本性に対する否定は、私の『想い』を否定しているのと同じであった。
「俺が、アイツに対し知る事は、アレがどうしようもない大莫迦であるという事だけだよ」
 その言葉に再び、感情が昂ぶる私。
 しかし、更に紡がれた彼の言葉によって、氷解する。
「だが、だからこそ、俺は、アイツを真の英雄に至る者だと信じた。まあ、未だにアレの本性は理解しきれないが、それでも理解したいとは思っている」
 その言葉に込められているのは、唯、真摯なる想いのみ。
 私は、目の前にいる相手が誰であるか、その正体を予感する。
 そして、何故、彼が自分を助けてくれたのか、その理由を理解した。
「だがしかし、不要な発言をして、キミを不愉快にした事は謝ろう。済まなかった」
 彼の正体が、私の予感どおりならば、謝るのは私のほうである。
「私こそ、感情的になってしまい、済みませんでした」
「否、それは別に構わないさ。寧ろ、他者の為に本気となれるその感情を、好ましく感じるくらいだ。特にこんな世界に於いてはね」
 そう応えて笑う彼の瞳には、単純な言葉では言い表せない、深い想いの色が宿っていた。
「では、互いに幾許かの相互理解を果たした事だし、俺はこれで失礼しよう。良い夢を!」
 彼は、満足げに再び笑うと、別れの礼儀を告げて去って行こうとする。
「待ってください!」
「うぬぅ?」
 私に呼び止められ、彼は、如何したのかと瞳で問う。
「色々とお世話になった御礼をしたいのですが・・・」
 私は、そう告げて、彼に対する礼の手段を自分が持ち合わせていない事に気がつく。
「別に礼を受ける程の事はしていないから、気にしなくって構わない」
 私は、彼の性格ならそう言って当たり前だと納得する。
 しかし、意外にもその言葉は直ぐに改められた。
「と、言いたい所だが、折角だからそのお礼というモノを頂戴するとしようか。それもキミの身体でね」
 彼の言葉の真意を図り兼ねて困惑する私の背後で、仲間達が彼へと軽蔑の眼差しを向けるのが分かった。
「だ、だめですぅ! それなら、ホリィーちゃんに代わって私が払います!」
 私の身を案じ、彼の前に立ちふさがるように躍り出るユーマちゃん。
 そのユーマちゃんを、彼は、つま先から頭の天辺まで探るように見回し、何故か軽く溜息をついた。
「済まない。キミでは俺の要望に応えられない」
 彼はユーマちゃんに対し、そう告げると、もう一度、彼女を一瞥して溜息をついた。
「な、なぜですか! 私がツルペタだからですか!」
「ユ、ユーマちゃん・・・」
 私は、彼女の反撃に一瞬だけ脱力を覚える。
 それに対し、彼は、困惑の苦笑を浮かべていた。
「否、そういう事ではなくて・・・。俺の言い方が悪かった。もっと考慮した言い方にするべきだったな」
 彼は、苦笑を快笑にして、言葉を続けた。
「キミの名は、ホリィーというのか。ならば、ホリィー、キミに一つ頼みがある。簡単なことであり、そして、難しい事でもある。今のまま変わらぬキミで在り続けてくれ」
 そう告げて、彼は、自分の前に立つユーマちゃんの脇をすり抜け、私の耳元で呟いた。
「今、その胸に在る想いを大切にし、彼女を護り続けてやるんだ。誰よりも何よりも『彼女』の事が大切なんだろう、キミは?」
 それは、私の『夢』を確かに肯定する言葉。
 だからこそ、彼の真意に驚く。
「何故っ!?」
「分かるさ、俺にも在るからな。自分の全てを尽くしてでも護りたい大切なモノが」
 彼は、笑んだ視線の先でユーマちゃんを一瞥し、更に深い笑みを浮かべる。
「私の事、普通じゃないと思わないのですか?」
「どこが? 人間が人間を想う気持ちに普通も何も無いだろう。それに『普通』なんていう常識は、その他大勢が勝手に決める意見の総意だろう。そんな自分が加わっていない事項に特別な意見を持つ気は無いさ」
 彼は、飄々とした口調で答えて苦笑する。
「そして、俺は自分の目で見た『真実』しか受け入れる積りは無い。キミは、本気で彼女を護ろうとした。だから、それだけで充分だ」
 彼は、その言葉と共に、一瞬だけ自らの心に秘めた想いを示す眼差しを私に向ける。
 それは、同じ想いを抱く者に対し向ける親愛の眼差し。
 その眼差しの意味を理解した私に満足し、彼は、軽く私の頭を撫でた。
「では、そういう事だ。達者でな、ホリィー」
「はい、貴方も良い夢を!」
 踵を返して去って行く彼の背中に別れの挨拶を告げる私。
 そこで、終われば美しい想い出として、全てが治まるはずであった。

「あっ、待って! 私からの御礼です!」
 ユーマちゃんは、トテトテと彼の許に近付くと、その頬に口付けをする。
『っ!』
 彼女の行為にその場にいた一同が驚く中で、一番に驚いていたのは、その御礼を受けた彼自身であった。
「素敵な御礼をありがとう、お嬢さん。でも、できる事なら、コッチの方が好ましかったかな」
 そう言って、意地の悪い笑みを浮かべながら、彼が指で指し示したのは、自らの唇であった。
 その悪ふざけを私が咎める前に、その存在は現れた。
「なら、私がそのコに代わって、貴方に濃厚な口付けをしてあげましょうか」
「うっ、現れたな! 招かれざる『ネコ』!」
 彼の表情に動揺が浮かぶ。
「ふっふっふっ! ここであったが百年目! 覚悟は良いかしら、ねぇーっ?」
「百年の歳月の間に又、その妖力を高めたか、このネコマタめ」
 彼と彼女の間に生まれ高まる緊張の激しさに、私たちは、全員が息を吸う事しか出来ないほどに緊張していた。
 眩しいほどの純白の毛皮に身を包み、強烈なまでの魔力をもって陽炎を立ち上げるその姿は、正に妖怪・・・否、魔獣・ネコマタであった。
「周囲を巻き込んでの戦いなど迷惑千万。という事で、ここは大人しく退却だ。皆、さらば!」
 妙に爽やかな笑顔で言い放つ彼だったが、次の瞬間、はっとした表情を浮かべて氷つく。
「やば、腕環着けっぱなしだった・・・」
 その言葉の意味は分からなかったが、それが彼にとって致命的な失敗である事だけは明らかであった。
「斯くなる上は、奥の手だ! 《神そ・・・、っ!? マジですか?」
「ふっふっふっ・・・、甘いわね。私が何度も同じ手を許すと思わない事ね。《月光の縛牢》は既に発動済みよ」
「ちっ、万事窮すか・・・」
 何かを達観して天を仰ぐ彼に、彼女は止めを容赦なく刺す。
『《魂縛る魔呪の蔦》!』
 それは精神に作用して、相手の動きを奪う攻撃補助魔法。
 驚くべきは、それを彼女が同時に三重発動させて放った事である。
 最初に用いた分を合わせれば、彼女は、全部で四つの魔法を連続発動させた事になる。
「まさか、《魔司》ッ!」
「ええ、それも信じられないくらいに凄い熟練振り・・・」
 《魔導》と呼ばれる特異の力への造詣が深いだけに、メリィア様とチェリナ様の二人は、彼女の実力に驚きを隠せずにいた。
「攻撃魔法で戦意喪失という『詰め』を打たれなかっただけ感謝しなさいよ!」
「分かった。分かった。ありがとさん」
 何が可笑しいのか、魔力の戒めに座り込みながら、彼は僅かに笑った。
「では、皆さん。このド阿呆剣士の処分は私がするので御機嫌よぉ。良い夢をね」
 満面の笑顔で告げる彼女のご機嫌ぶりが凄く怖かったが、それを口に出せる人間は存在しなかった。
「そういう事で、キミ達も元気でなぁ。さらば!」
 ズルズルと引き摺られていく彼が告げた苦笑の言葉には、何処か哀愁が感じられた。
 だから、私は思わず言ってしまった。
「お幸せに・・・」
「ああ、キミ達もなぁ!」
 その苦笑の奥に隠された『真実』に気が付いたのは、私だけであった。

「結局、あのヒトは一体、何だったのだろうね?」
 ユーマちゃんが、台風の過ぎた後の爽やかな空気を思わせる笑顔で私に尋ねる。
「ホント、何だったのだろうね」
 私は、既に予感から確信に変わっていたその応えを、敢えて誤魔化す事にする。
 それは、彼の名誉の為であり、私自身の幸せの為でもある。
 私は、この世界で幸せになる為には、あの二人にだけは深く関わってはいけない事を本能的に感じていた。
 でも『禍福はあざなえる縄の如し』とも言うし、本当に如何しようも無く困った時には、彼ら二人を頼ることにしよう。
 彼らなら、きっと私に必要な助けを与えてくれるはずだから。
「まあ、何はさて置き、それはそれで楽しかったわね」
 チェリナ様の一言に皆が頷く。
「じゃ、そろそろ帰るとしましょうか」
 メリィア様は満足そうに笑って促す。
「一応、自慢に思って良いんですよね。今日の事?」
「一応も二応も無く、自慢というか自信に思って良いんじゃない。実際」
「・・・うん。私たち、凄い・・・」
 シルクさん、アンナさん、そして、フィーノさんも嬉しそうに語り合う。
「では、帰路に出発!」
「うん。でも、その前に・・・。ホリィーちゃん!」
「何?」
 私は、ユーマちゃんに名前を呼ばれて振り返る。

『ちゅっ!』
 私の唇に、ユーマちゃんの柔らかな唇が重なる。
「約束。助けてくれて、ありがとう」
 上目遣いに私を見詰めながら、照れたようにはにかむユーマちゃん。
・・・うぅーっ、可愛すぎる! もう駄目! 嬉しすぎて、ふにゃふにゃぁー!
『バタっ!』
 私は嬉しさに気絶寸前の意識を必死に堪えて、心の中で彼に対する感謝の言葉を呟く。
・・・『雷聖さん、ありがとう。お陰で良い夢を見られそうです』
 私は、意識が薄れる中、自分の身体の痛みすらも幸せに感じていた。
 だって、それは先刻の出来事が決して『夢』ではない事を教えてくれているのだから。



《PS》 
この物語は、『ちょいあ!(天蓬元帥氏・著 徳間書店・刊)』の登場キャラを基にしてパクリ・パロったモノです。
元となる『原典』の方は、『萌え萌え』の本当に面白い作品なので、興味をもたれましたら、是非(買って)一読を!

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